深い眠りに入るための3つのルール
眠くならないときは、体と頭が充分にリラックスできていない状態です。そんなときに、無理に寝ようとしても逆効果になります。そこで、約30年前にアメリカで「刺激コントロール法」というものが開発されました。
「パブロフの犬」の話をご存じでしょうか?
犬にエサをあげるときにベルを鳴らすことを続けると、ペルの音を聴いただけで犬はよだれを流すようになるというものです。
よだれは意識して出せるものではありませんので、脳の中でよだれを出す信号が、「エサ自体」でなく『ベルの音』に変わったということです。これを条件反射といい、人間にも当てはまる原理です。
刺激コントロール法では、
布団・寝床・寝室・就寝時刻
↓
リラックス・快眠・幸せ
という条件づけを行ないます。
眠るときには、次の3つのルールを守りましょう。
①眠くなってから、布団に入る
眠くないのに布団をかぶって無理に眠ろうとしてはいけません。眠れないのに眠ろうとすると、「布団」=「眠れない」となってしまいます。
ですから、眠る予定の時刻がきたからといって無理に横になるのは良いことではありません。必ず眠気が起きてからにしてください。
これを繰り返すことで、「布団・寝床・寝室・就寝時刻」=「リラックス・快眠・幸せ」という条件づけが完成します。
すると、布団に入れば、すぐに寝つけるようになります。
②「布団」=「眠るところ」という条件づけをする
ベッドや布団は、睡眠のためだけに使います。布団に入ったまま、テレビを見たり、ゲームをしたり、物を食べたりすることはやめましょう。
「布団」=「眠るところ」という条件づけができていれば、入眠時に副交感神経が充分に働き、心身はリラックスして快適な睡眠へと入っていきます。
③眠れないときは、布団からいったん出る
布団に入って15分以上寝つけなければ、「まだ眠くない」ということです。充分な眠気があれば、人はだいたい15分以内に眠りに落ちます。15分たっても目が覚めているということは、すぐに眠れない可能性が高いということです。
そのまま眠れずに横になっていると、「布団の中」=「眠れない」という条件づけがされてしまいます。すると、寝つきはさらに悪くなり、睡眠の質が低下します。
思い切って起き上がり、寝床からいったん離れましょう。寝室で眠っている人は必ず別の部屋に行きましょう。
寝室と眠れないことをつなげて考えないようにするためです。そして、眠気が増すように工夫しましょう。間違っても寝酒を一杯なんてことはダメです。
こうした場合、読書やストレッチなどの、頭を使わない単純作業がおすすめです。
読書と言っても、面白いサスペンスや冒険小説は読み始めると興奮して眠れなくなってしまいます。
すぐに眠気を催す難しい本や、自分の趣味に関する本、あまり刺激のないシンプルな小説がおすすめです。
音楽を聴くのも眠りを誘うのに効果的です。クラシックやヒーリング音楽と呼ばれる穏やかなBGMはおすすめです。
子守唄もバカにできません。モーツァルトの子守唄が有名ですが、シューベルトやブラームス、ショパンといった多くの作曲家が子守唄を作曲しています。
日本の子守唄も、ゆっくりとしたテンポで眠りを誘います。
刺激コントロール法は、今までの自分の習慣を大きく変えることになります。寝つきが悪い人がこれら3つのルールを守ろうとすると、一時的に就寝時刻が遅くなることがありますが、ここは我慢のしどころです。
最初は睡眠不足になったり、睡眠のリズムが一時的に狂って、昼間眠くなったりすることもあるかもしれませんが、続けることで今までよりずっと寝つきがよくなり、「起きたら、疲れがとれていた」という理想的な快眠を実現することができるのです。
とにかく、自然に眠くなってから寝床に入ることがポイントです。それを忘れずに心がけましょう。
安眠する方法は「睡眠時間を削る?」
1日8時間眠らないと健康じゃない、7時間でいい、6時間で充分!など、人にとって最適睡眠時間は何時間なのか、学者の間でも意見が分かれています。
最適睡眠時間は人によってそれぞれです。睡眠時間が長いか短いかも人それぞれと考えるべきです。
日中に一生懸命仕事をすれば、心身を興奮させる交感神経や体力を使います。気持ちよく疲れていると熟睡することができます。
「短時間睡眠型」の人の場合は、深い眠りならば、睡眠時間は短くてもいいのです。
逆に「長時間睡眠型」の人の場合は、深い眠りの時間が長いということになりますが、長く眠っているにもかかわらず、熟睡感がない、疲れがとれない、ということがあります。
8時問以上眠っている人も、その睡眠の質をチェックしてみると、布団に入っても1時間くらいゴロゴロしていたり、途中で何度も目が覚めたり、朝起きても布団の中でグズグズしていたり、という場合が多いのです。
こうした、睡眠時間と熟睡感が一致しない人は、「逆転の発想」を試してみてください。
睡眠時間を意識的にギュッと短縮させてみるのです。
睡眠が続かず寝たり起きたりという時間があるとしたら、その時間を睡眠時間から差し引くのです。
たとえば、8時間寝ていたとしたら、就寝時刻を2時間遅らせて、6時間睡眠にしてみるのです。
これを「睡眠時間制限法」と言います。
最初のうちは、起きるのが辛かったり、睡眠不足を感じたりします。
しかし、そうすることで、体自身がその時間の中で睡眠を深くしようと自然にしていきます。
寝つきは良くなり、途中で起きることも減り、熟睡感が高まります。この睡眠時間が、自分にとっての「最適睡眠時間」なのです。
活動的な人というのは、生活にメリハリがあります。集中して仕事をして、しっかりと眠り、目覚まし時計が鳴る時間には、スッと起きて「今日もやるぞ!」という脳に切り替わっているのです。
ダラダラした生活習慣は、睡眠の質を落とします。唾眠時間を短めにしても、質のいい睡眠をとることが大切です。
睡眠は時間よりも質にこだわってください。
深い眠りは免疫力をアップさせる
脳の中には、「眠らせる脳」と「眠る脳」があります。
頭の中心にある間脳に視床下部という器官があり、息をする、体温を調節する、食欲の調節をするという、生きていくために必要な部分です。
そこに睡眠と目覚めの「司令部(中枢)」があります。脳全体を眠らせたり、起こしたりするわけです。
脳全体を眠らせるといっても、眠るのは大脳です。大脳はものを考え、記憶を留めておく部分で、睡眠中は動きを止めて休息します。
しかし、その間に数回、日中に見たものや記憶を整理したり再構成したりします。夢は、この時にみると言われています。その働きをコントロールするのは、間脳の下にある脳幹です。
眠りに関する司令は、脳内の睡眠物質の増減によって行なわれます。およそ40種類あることがわかっています。
これらは日中の活動を通して増えていき、一定の量までそれが溜まってくると眠くなります。
ですから、昼間の活発な活動によって睡眠物質を増やしておくことが夜になって「眠らせる脳」を活性化させ、寝つきをよくすることになります。
また、1日の眠気と目覚めのリズムをつくっている「体内時計」が視床下部から少し離れたところにあります。
睡眠中枢は体内時計の近くにあるわけです。睡眠中枢はその影響も受けます。睡眠物質と体内時計の影響によって、睡眠中枢は大脳を眠らせたり、起こしたりしています。
「運動したり、興奮したりすると、アドレナリンが出る」とよく言われますが、アドレナリンは覚醒ホルモンで、このときの人間の体は「臨戦態勢」です。
眠る時刻になっでもアドレナリンが高いままだと、寝つきが悪くなります。
ですから、寝る前1時間くらい前からリラックスタイムをとりましょう。それは、アドレナリンのような興奮系化学物質の働きを抑えることでもあるのです。
深い眠りに入る最初の3時間が大事!
寝てから最初の3時間は深い眠りに入る時間帯です。その深さが熟睡感を決めると言ってもいいでしょう。
それともう一つ、この3時間の眠りの深さは「免疫力」にも大きく関わっています。何故なら、このときに大量の成長ホルモンが出るからです。
大人にとっても、成長ホルモンは不可欠!成長ホルモンが出ている間に細胞のメンテナンスが行なわれるからです。
傷んだところを修復したり、体がリフレッシュできるのは、成長ホルモンのおかけです。つまり、免疫力が上がるのです。
成長ホルモンは少しずつ出てもあまり効果がありません。一気に出ないと、疲れがとれるくらいまでの効果を発揮してくれないのです。ですから、寝つきをよくし、直後の3時間を熟睡できるかが、翌日に疲れを残さないカギになるのです。
眠れない時の対処法
安眠に導く「筋弛緩トレーニング」
心のストレスが体をこわばらせ、肩こりなどの「体のストレス」となって寝つきを妨げることもよくあります。肩こりに悩まされ、ぐっすり眠れないという人が多いようです。
そこで、ベッドの上で簡単にリラックスできて、安眠に導く方法「筋弛緩トレーニング」を紹介します。
まずは、ベッドにあお向けになり、全身の力を抜きます。足は自然に伸ばした状態で、両手を脇に置いて力を抜いて伸ばします。
次に、両手を5秒間ギュッと握りしめ、一気に力を抜きます。これを2、3回繰り返せば、リラックスすることができます。
こっている特定の部分がある場合は、5秒間、その部分に力をギュッと込め、その後、力を抜きます。こちらも、これを2、3回繰り返せば、筋肉がゆるみ、血流がよくなります。
手、足、ももなど、いろいろな部位に応用できる方法で、快眠には大変効果があります。
さらに、目のこりをほぐす方法もおすすめです。
目を酷使することになる現代生活では、目と周囲の筋肉の緊張が快適な睡眠を妨げていることが多いのです。
まずは、額にしわを寄せるようにまゆ毛を上げます。次に、まゆを中央に寄せ、目を閉じます。その後、目を開いて、目線を左、右、上、下の順に動かし、最後に正面を見ます。
これで、目と周りの筋肉の緊張をほぐすことができるので、リラックスすることができます。
ベッドでできる「簡単リラックス法」
ストレッチを行なうことは快眠に効果があります。さらに、ケガの予防にもなりますし、同時に運動の効果も高めます。
こわばった筋肉をほぐして柔軟にすることと、疲労で固まったり、熱を持った体をクールダウンさせることができるからです。
就寝前に肩こりなど「体のストレス」を解消するためにも、ストレッチはおすすめです。
ここでは寝床の上で行なえて、リラクゼーション効果も得られるストレッチ法を紹介します。
あお向けになって行なう方法と、うつぶせで行なう方法の二つの方法があります。
【あお向け】
・布団やベッドの上であお向けになり、両手両足を思いきり遠くへ伸ばします。
・上体をゆっくり起こし、両手で両ひざをかかえて丸くなり、自分がボールになったつもりで前後に体を動かします。
・あお向けの状態から片ひざを両手でゆっくり胸のほうに引き寄せる。いったん足を戻したあと、反対側のひざも同じように引き寄せる。これを各5~10回程度くり返す。
・体を水平に保ったまま、両手と両足をゆっくり右側に曲げる。左側へ同じように曲げる。これを何回かくり返す。
【うつ伏せ】
・両手を胸の両脇に置いた状態でうつ伏せになる。両腕を立てて上体を持ち上げる。
・まくらを太ももの下に置き、両手を横に大きく広げる(手のひらは下向き)。この状態で左足を上に持ち上げる。そのあと、持ち上げた左足を右のほうへゆっくりねじる。足を元の位置に戻したあと、右足も同じようにする。
・息を大きく吐きながらお尻を思いきり後ろに引く。そのとき、両手は前のほうにグッと伸ばす。この姿勢を10~15秒ほど保つ。
実は、この方法は朝の目覚めのときに行なうのもおすすめです。起床時に行なうと、長い時間、横になってこわばった筋肉をほぐし、体を目覚めさせてくれるのです。
ストレッチや軽い運動は、深部体温を上げたあと急速に下げるので、寝つきをよくしてくれます。